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「世界で最も美しい顔100人」には大した意味がないということ

ずいぶん前のことになるが、高橋愛が外国の映画サイトの「世界で最も美しい顔100人」のリストにノミネートされた、という話がネット上でニュースになり、『ヤングタウン』でも話題に上ったりしたことがあった。最近、モーニング娘。に特に興味を持っていない人と話をしていて、この件が意外にも変な形で世間一般に知られていることがわかったので、この記事を書くことにした。

問題のサイトはこれ: http://www.tccandler.com/
問題の企画はこれ: http://www.tccandler.com/beautiful-faces/

日本語のインターネットの世界でこの件がどのように語られているかは、「最も美しい顔」で検索するとわかるだろう。2012年には日本からは桐谷美玲、佐々木希、黒木メイサが入選した。2011年には佐々木希と蛯原友里が入選し、高橋愛はノミネートされたが100位までには入らなかった。


この話を知って最初に思ったのは、国際的であるとはいえ、西洋人によって運営されているサイトのリストで、この面々が「美しい顔」として(他の大勢の潜在的候補に先立って)選定されるのはおかしい、ということだった。それが本当なら、この人々が入選したことよりも、そんなランキングが存在すること自体にニュース・バリューがある、ぐらいの意外さだ、と思ったのである。

それで実際にサイトを見に行ってみて、このリストには大した意味がないということがわかった。


● 何の権威もない個人の映画評サイトである

このサイトは「アメリカの映画サイト」などと紹介されているけれども、http://www.tccandler.com/about-the-site/を見るとわかるように、ロンドン生まれミネアポリス在住の、過去に共同で映画コミュニティ・サイトを運用していたことがあるプロのポーカー・プレイヤーが趣味で個人的な映画評を載せているサイトである。レビューがどこかにシンジケートされているわけでもない、何の権威もない普通の個人サイトだ。

念のため書いておくが、私にとってはこの手のレビュー・サイトに「権威がない」というのはポジティブな指標ではある。ただ、このサイトの映画評は単純にきわめて質が低い。映画好きな人はたとえばhttp://www.tccandler.com/movies-A/にあるタイトル一覧の☆の数をざっと見るだけでもわかると思う。まあこの件は話が逸れるのでここでやめておく。


● ノミネートと選定のプロセス

このリストの候補がどのようにノミネートされ、順位がどのよう決定されているかの説明はわかりやすい形では掲示されていない。2012年のリストのページ(http://www.tccandler.com/100-most-beautiful-faces-2012/)にある簡単な説明がすべてだと思う。

私がこのサイトを初めて見たときには、過去の年度のコメントが残っていて、そこに載せられたサイト・オーナーのコメントから、リストの選定プロセスを推測することができた。現在ではそれらの情報は削除されている(後述のように、Wayback Machineで確認できるが、面倒なので今回はチェックしていない)。

これ、自分がよく知らない「外国」の候補者については、サイトの訪問者が残しているコメントから名前を集めているのだ。現在のメイン・ページ(http://www.tccandler.com/beautiful-faces/)の下の方にあるコメント欄がそれである。

こうやって集めた名前をGoogleの画像検索で調べ、自分の好みに合った人をノミネートする。具体的な数字は忘れてしまったけれども、最初に数百人のリストを作るということだったと思う。

この数百人を100人に絞り込むプロセスに関しては、「知り合いにリストを送って投票してもらい、上位を選んでいる」というていどの説明しかなかった。どんなバックグラウンドの人たちが何人いるのか、どういう手順で投票・集計しているのか、などの具体的な話はまったくなかったので、そもそもそんなことやっていなんじゃなかろうか、というのが当時の印象だった。


● なぜ高橋愛がノミネートされたのか

いま存在しているコメント群を見るとわかるように、サイトを訪れた一般ユーザーが、自分の好きな女性の名前を列挙する。アジアを中心に、英米以外の文化圏の人たちが特に熱心だ。

で、高橋愛がノミネートされた理由は、そのときモーニング娘。のファンと思われる人がモーニング娘。のメンバー数人を推薦したから、である。

当時、けっこう頑張って調べたのでこれは確信があるのだけれども、ノミネートされた日本人4人(佐々木希、蛯原友里、高橋愛、上戸彩)のうち、2010年にすでにリスト入りしていた佐々木希を除く全員がこのユーザー・コメント欄で日本人の読者によって推薦された人だった。日本人が合計で何人だったかは覚えていないが、そんなに多くは(数十人という規模では)なかった。

ちなみにこのときには道重さゆみも推薦されていたが、モーニング娘。からは高橋愛だけがノミネートされた。


● なぜ道重さゆみやその他の人たちが落選したのか

1. 日本的な「かわいさ」忌避のバイアス

そのときのコメントに、別の日本人候補者について「われわれはこんな若い女性は好まない」という、いくぶん見下した語調のものがあった。これは好意的に見れば、若い女性をノミネートしても投票者は好まないからどっちにしても落選する、だからノミネートする意味がない、ということなのかもしれないが、いずれにしても日本的な「かわいさ」は最初から忌避するバイアスがあるように思う。まあこれは最終的に出てきたリストを見れば一目瞭然か。


2. Googleの画像検索で調べている

推薦された人がどんな「美しい顔」をしているかのチェックには、Googleの画像検索を使っているという説明があった。ということは、各候補者の名前をローマ字で入力して検索したときに、最初の方にどんな写真が出てくるかが決め手となる。

ちょっとやってみようか: "michishige sayumi"で画像検索

この検索結果はタイミングやユーザーの居場所(IPアドレス)などによって変わるだろうから客観的な資料としては使えないけれども、このやり方が抱える問題点は理解できるはずだ。2年前には、出てくる写真はもっと幼かったはず。

3. そもそも調べたのかどうか不明

プロセスが不透明なので、ノミネートされなかった人たちについてはそもそも審査が行われたのかどうかが不明である。


● なぜこんなものが注目されているのか

以上の選定プロセスを知った上で、改めて「最も美しい顔」で検索した結果を見ると凄まじい違和感があるだろう。なぜこんなことになったのか。

Googleで"TC Candler"を検索してみるとわかるはずだが、このサイト/企画は、アジアを中心に非英語圏の人々から特に注目されている。検索結果のスニペットには英語しか見えなくても、実際に飛んでみるとアジアの人が英語で作っているサイトだとわかるケースも少なくない。敢えて断言すれば、このサイト/企画は英米ではまったく注目されていないと言ってもよい。

そう考えると、これはスタートアップ・サイトが世界的なトラフィックを作る戦略としてはなかなか巧妙だ。日本語のネット世界で起こっているような現象が、他の非英語文化圏でも起こっているのだろう。「英米人が作った国際的な美しい顔のリストに、自国の女性が入った」ということだけで大喜びし、そのリストの意味とか価値には関係なく話題に取り上げられる。このサイトが年を追うごとにカバーする国を増やしているのは、このやり方に手応えを感じているからに違いない。


● Wayback Machineの参考リンク

現在のサイトから削除されている情報に関しては、いまでもWayback Machineでそこそこ調べることができそうだ(今回は面倒なのでチェックしていない)。たとえば、当時私が見た2011年のランキングのページはこれ:

http://web.archive.org/web/20120709180243/http://www.tccandler.com/beautiful-faces/most-beautiful-2011/

浅薄な解説とネットから拾ってきた写真がついていた。


● 個人的感想

おわかりいただけたと思うが、これはいかなる客観性もない個人的なリストに過ぎない。2012年度の1位にEmilia Clarkeを持ってくることからわかるように、基本的にミーハーである。英米以外の西洋諸国の候補者も、国際的に活動しているモデル以外は、英米の映画やドラマに出演して有名になった女優が多いという印象がある。

というように、いろんな問題を抱えたリストなのだが、私の中のミーハーな部分はこういうのもそこそこ楽しめたし、それ以外にもいろいろと考えるきっかけを与えてくれた。

最初に思いつくのは、なんで日本語のネット世界でこんなに話題になっているのか、ということで、ネット・メディアの質の低さとか、ネット上のミームの危うさみたいな話になる。これはしかし面白い話にはならないのでやめておく。

一番驚いたのは、このラインナップ(佐々木希、蛯原友里、高橋愛、上戸彩)を見て直感的に「おかしい」と思ったらしい人をあまり見かけなかったことだ。

今回ざっと調べてみると、あの頃と比べると違和感を表明している人ははるかに増えている(たとえば「世界で最も美しい顔 おかしい」でGoogle検索)。中国でもそんな話をしている人たちがいる(http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=68157)。

でも注意しなくてはならないのは、このリストの「おかしさ」から、「西洋人の美的基準はよくわからない」という結論を引き出してはいけない、ということだ。本記事で説明したように、このリストの審美的基準は一般的なものではなく、サイト作者の個人的好みである。そしてそれ以前に日本を含む非西洋諸国の女性に関しては、選定プロセス自体がいい加減すぎる。


人がどんな顔を「美しい顔」と認識するかはとても興味深いトピックだ。私の場合は、特に欧米の文化の中で、日本人を含む極東東洋人の顔がどのように評価されるかということに長く興味を持ってきた。これは単純に私が欧米の映画/ドラマのファンだから。

で、2012~2013年のいま、アメリカのTVドラマに主役級で出演しているアジア系の女性は2人いる。"Elementary"のLucy Liu (Googleで画像検索)と"Nikita"のMaggie Q(Googleで画像検索)。前者は特に、3大ネットワークのドラマでアジア系女性が主役を張るのは史上初めてであるだけでなく、シャーロック・ホームズ物のドラマなのにホームズを演じるJonny Lee Millerよりもワトソン(「ジョーン・ワトソン」なのだ)を演じているLucy Liuの方がギャラが高かったということで大きな話題になった。

こんな状況下で、佐々木希とか蛯原友里が「美しい顔」のランキングで上位に来るなんてそうとうびっくりする出来事なのである。高橋愛に関しては……ノーコメントということにしておこう。
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