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『彼と一緒にお店がしたい!』のミュージカル的歌詞世界 #2

「『彼と一緒にお店がしたい!』のミュージカル的歌詞世界 #1」の続き。

無邪気でかわいくて夢いっぱいの曲ではあるが、外から俯瞰する視点が導入されることによって、より大きな物語が意識され、切なさが出てくるという多重構造をしている。ミュージカルの一ナンバーであっておかしくないような曲なのである。


ミュージカルの一ナンバーだった場合、この曲は起承転結の「承」の部分、たとえば1時間半のミュージカル映画の中で開幕15分後あたりに置かれるものになるだろう。主人公と「彼」、および二人が属しているグループはすでに紹介されている。彼と別れて帰宅した主人公は、「帰りが遅いじゃないか」と文句を言うパパとの間に険悪な空気を残したまま自分のベッドルームに引っ込み、パジャマに着替えて寝る準備を整えた上で、iPhoneを持ち出して彼へのメールを書き始ながら、彼への想いを歌い、踊る。

そしてここから15分ぐらい経ったところで、二人には何か不幸なことが襲いかかる。結末がどうなるのかは物語が喜劇なのか悲劇なのかによるわけだが、そこまでに起こる諸々の事件は、『彼と一緒にお店がしたい!』の底抜けな楽しさと無邪気さに反比例して深刻なものになるだろう。


私は昔から、物語のなかでこの位置におかれる楽しいナンバーが大好きだった。有名どころでは…

『West Side Story』(『ウエストサイド物語』)の『I Feel Pretty』。鏡を見て「私はかわいい」を連呼する道重さゆみの大先輩マリアを演じているのはNatalie Wood。歌声はMarni Nixonという人が吹き替えている。こんなに舞い上がっている原因である「彼」は対立する人種グループに属していて、2人はギャング間抗争に巻き込まれる。『ロミオとジュリエット』を題材にした悲劇。





『My Fair Lady』(『マイ・フェア・レディ』)の『I Could Have Danced All Night』。自分を街角から拾ってくれたヒギンズ教授による上流階級の発音のレッスンがうまく行き、誉められて舞い上がっているイライザを演じているのはAudrey Hepburn。歌声は上と同じMarni Nixon。このあと、2人の間の関係はもっぱら教授のせいでぎくしゃくするのだが、最後には教授が反省して仲直りするという、G・B・ショーの『ピグマリオン』を題材にした喜劇。




『Singin' in the Rain』(『雨に唄えば』)の『Good Morning』。落ち目のスターGene Kellyの再生計画として、ミュージカルを作ればいいじゃないかというアイデアを思いついてみんなハッピーな場面。女性はDebbie Reynolds。このあと親密になったGene Kellyとの間に危機が訪れるが、50年代ハリウッド・ミュージカルの必然として能天気なハッピー・エンディングを迎える。




『Bye Bye Birdie』(『バイ・バイ・バーディー』)の『How Lovely To Be A Woman』。Ann-Margret演じる女子高生が同級生の男の子との恋に舞い上がり、「女であるってことはなんて嬉しいことなんでしょう」と歌う。「女」とは、16歳という年齢になって大人びてきた、ということ。群舞のないソロ曲だが、寝室、(メールではないが)彼との電話、寝る準備など、『彼と一緒にお店がしたい!』との共通点がけっこうある。また、「一緒にお店をしたい」わけではないが、「男の子を調教する」という感じの、自分が少し優位に立っているニュアンスも似ている。この後に訪れる危機は、町にやってきたロック・スターに彼女がなびく、というものだ。最終的には、同級生との、地味ではあるが誠実なおつきあいが大切だと気づいて元の鞘に戻る。いまとなっては道徳的なストーリーだが、当時はかなり批判された「革新的」なブロードウェイ・ミュージカル。





『Carousel』(『回転木馬』)の『If I Loved You』。曲の雰囲気がまったく違う、男女2人によるデュエットだが、『彼と一緒にお店がしたい!』から一番強く連想するのが実はこの『Carousel』なのだ。この作品の「彼」はほんもののチンピラで、主人公の女性は周囲の強い反対を押し切って結婚する。しかし、彼女がこどもを身ごもったというのに、彼は(家族を養いたいという善意からではあったが)知り合いの強盗の計画に乗り、失敗して死んでしまう。この『If I Loved You』は出会ったばかりの二人が互いに遠回しに求愛しているところ。『If I Loved You』と仮定法になっているのは、その気まんまんなのにダイレクトは言えずに「え~、ほんとは好きじゃないけどぉ~、もし好きだったら~、口に出せなくて~、チャンス逃しちゃいそう~」、「つまり俺のことを好きじゃない、ってこと?」みたいな会話をしているということで、こうやって説明すると非常にばかばかしくて恥ずかしい。このジャンルが廃れたのも無理はないな。男はGordon MacRaeで女はShirely Jones。個人的には、Shirely Jonesはこの時期の「歌姫」タイプのミュージカル女優のトップである。物語全体としては、びっくり展開のハッピー・エンディング。




もうちょっと続けよう。

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