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2012年の各国の"The Voice" #2

「2012年の各国の"The Voice" #1」の続き。

もう1つ良かったデュエットが、Vince KiddというコンテスタントとJessie Jによる"Nobody's Perfect" (http://www.youtube.com/watch?v=f0NnEDsPErM)。



Vince Kiddを番組で勝たせるために持ち上げる、という目的からすると完全な失策に見えるけれども、Vince Kiddにとってはこれがシリーズを通してのベスト・パフォーマンスになったように思う。

このJessie Jはもう凄いとしか言いようがなくて、こんなものを見せられると自分はなんでアマチュアの出場者たちのパフォーマンスなんか見てるんだろうとがっくり来かねない。ぎりぎりのところだったのではないか。


日本のアイドル的な文脈で私が気に入ったのは、セミ・ファイナルで上のVince Kiddに敗退したBecky Hillという女の子だった。Corinne Bailey Raeの"Like a Star" (http://www.youtube.com/watch?v=YWRyNBSJWRU)。




声も歌も魅力的だが、18歳という若さに伴う「脆さ」があって、それを番組中で見せることをためらわないという点で、日本のアイドルっぽさがあった。また、私がそもそもタレント・ショウに求めているのは、このニッチの人たちだ、という気がした。ということはやはり私は日本のアイドルにハマる運命にあったんだろう。

歌い終わって、Danny O'Donoghueがこの曲を聴いたことがない、もっとみんなが知っている曲を選ぶべきだ、とコメントしたときに、Jessie Jが「何言ってんの」と顔をしかめたのが面白かった。


● オーストラリア版の"The Voice"は2012年にNine Networkで始まった。

コーチはDelta Goodrem、Joel Madden、Seal、Keith Urbanの4人。私がまともに音楽を聴いていたのはDelta Goodremのみ。Joel MaddenはNicole Richieの夫だ、と言われたら、ああそうかとなるていど。この払拭しがたいB級感は"Big Brother Australia"と共通する点で、これはこれで趣がある。

優勝したのは女性ソウル/R&BシンガーのKarise Eden。これはファイナルでのLorraine Ellisonの"Stay With Me Baby" (http://www.youtube.com/watch?v=1POBkwoLKvM)。



歌の上手さとともに、これでまだ19歳だということに驚かされる。私としてはこのタイプのコンテンポラリーなソウル/R&Bには飽きているのだけれども、この実力派の歌手が他のコンテスタントたちにちゃんと勝ったのはよかったと思う。

以上で、2012年の"The Voice"の紹介は終わり。

優れた歌手がアマチュアのコーチをする、というコンセプトは、コーチたちが単なる顔見せだけでなく実際にコミットするならば、とても面白いコンテンツになりうる、というのが英国版とオーストラリア版を見ての感想だった。

これと似た面白さがあるのが、現在進行中のアメリカABCの"Duets"という番組。この番組では、プロの歌手がアマチュアのコンテスタントと毎週デュエットで歌を歌う。下手なことをすると悪評がパフォーマーとしての自分にも降りかかってくるから、プロたちはかなり頑張っているように見える。また女性歌手にKelly ClarksonとJennifer Nettlesの実力派が起用されていて、彼女たちの歌を聴いているだけでも楽しい。

現時点で一番気に入っているのは、John GlossonというコンテスタントとJennifer Nettlesによる"Stay"。Jennifer Nettlesが所属しているバンドSugarlandの歌である (http://www.youtube.com/watch?v=cWCLxMASSpw)。


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2012年の各国の"The Voice" #1

昨年、アメリカの歌コンペティション番組"The Voice"について書いた。これのフォローアップとして、2012年の"The Voice"についても簡単にカバーしておくことにする。

前にも書いたように、この番組は"Big Brother"などのリアリティ・ショウで知られるオランダのEndemolという会社がフォーマットを作ったのだが、これが大ヒットして"Big Brother"と同じように世界各国でフランチャイズされている。このWikipediaでのリスト(http://en.wikipedia.org/wiki/The_Voice_%28TV_series%29)を見ると凄いの一言だ。リストに日本が"TBA"としてだが入っているのが気になる。

私は今年はアメリカ、英国、オーストラリアの番組を完全にではないけれども追いかけてみた。


● 最初に済ませておくと、アメリカ版の"The Voice"シーズン2は、エピソード数が増え、視聴率も上がったとはいえ、内容は面白くなかった。優勝者が昨年と同じく黒人男性のR&Bシンガーで意外性がなかったということもあるが、それ以外のコンテスタントたちも昨年と比べると小粒だったように感じた。

4人のコーチは昨年と同じで、掛け合いは少々マンネリ気味。ショックだったのは、昨年の優勝者はもちろん、そこそこ気に入っていたDia Framptonが「プロ」としてゲスト出演して披露した曲がとてもつまらなかったことだ。

シーズン3はすでに製作が始まっており、年2回のスケジュールとなって、今年の秋に放映が開始される予定とのこと。何か根本的なところを変えないと内容的にはやばいという予感がする。


● 英国版の"The Voice UK"は今年からBBC Oneで始まった。

コーチ陣は、唯一の女性コーチとしてJessie J、The Black Eyed Peasのwill.i.am、Tom Jones、そしてDanny O'Donoghue。最後のDanny O'Donoghueという人を私は知らなかったのだが、アイルランドのThe Scriptというバンドのフロントマンで、曲を聴くと聞き覚えがあったから売れているのだろう。

"The Voice UK"には英国のリアリティ・ショウっぽい脂っこさがあって、アメリカ版よりも面白かった。特にコーチとコンテスタントたちの間の関係がアメリカよりも濃密だったのか、勝負に勝つということだけでなく、ミュージシャンとしてどう振る舞うべきなのかという根本のところまでを教え込もうとしている感じがしたし、その結果、各チームの出場者の個性も強く出ていたように思う。

優勝者はTom Jonesが選んだLeanne Mitchellという女性。ジャンルはちょっと古めのポップ。これはセミファイナルで歌ったWhitney Houstonの"Run To You"(http://www.youtube.com/watch?v=ZqcVjFSL6sk)。



それまでもたしかに上手だったのだが、セミファイナルまで来てこの強力なパフォーマンスを繰り出し、同じようなディーバ・タイプの、視聴者の支持がより高かったと思われる女性シンガーをくだした。ファイナルでは、視聴者人気が高いはずの男性のコンテスタントたちに勝って優勝し、私にとっては大満足の結果となった。"Idol"フランチャイズではまず勝ち抜けなさそうな実力派の歌手がこのように勝てるという点で、"The Voice"にはたしかに大きな意味がある。ただ、今後、この人に限らず、出場者たちがミュージシャンとしての道で成功できるかはまったく別の話だ、という感じもする。この点ではやはり"Idol"フランチャイズの方が成功率が高くなるんじゃなかろうか。


"The Voice UK"のファイナルでは、コンテスタントたちがコーチと1曲ずつ、コーチの持ち曲をデュエットで歌ったのだが、その中に素晴らしいものが2つあった。まずは、優勝者のLeanne MitchellとTom Jonesによる"Mama Told Me Not To Come" (http://www.youtube.com/watch?v=g9iGRoH82zQ)。



Tom Jonesはいま72歳だ。番組中では他のコーチたちから、からかい込みで「大御所」扱いされ、本人は開き直って、自分がどれほどの有名なシンガーたちと共演してきたかを自慢する、というギャグを繰り返してきたけれども、いざステージに立って歌うと若造たちとは比べものにならなかった。かっこよすぎる。

長くなってきたのでエントリを分ける。

American Idolを久しぶりに見て

今年は"American Idol"を久しぶりに見て感想を書いたし、これ以外にもタレント・ショウをいくつか追いかけた。2009年に日本のアイドルにハマる前は「アイドル」といえばこちらの方だったのに、我ながら驚くような感性の変化や新たな発見があった。そこでいまのうちに全体的な感想を書き留めておこうと思う。


● このブログで欧米のリアリティ・ショウを扱い、「リアリティ・ショウについて」というカテゴリを作ったそもそもの理由は、日本のアイドルがリアリティ・ショウの出演者に似ていると思ったからだった。で、いま改めて"American Idol"などのコンペティション番組を見ると、「成長(growth)」という言葉が頻繁に出てくるのが印象に残る。日本のアイドルと同じように、タレントが成長する過程を見て楽しむという側面はやっぱり大きい。

"American Idol"のようなタレント発掘番組では成長のゴールがはっきりと見えているのに対し、日本のアイドルのゴールは不明瞭である。これはアイドルの側の問題というよりも、日本のエンタテインメント業界の弱さを反映しているのだろう。メインストリームのエンタテインメントが貧弱すぎるから、そこに行くことが大きな目標にならない。だからこそ、ゴールが不明瞭なまま続くアイドルというジャンルが商業的に成立している。


● そもそも私が"American Idol"みたいな番組にハマったのは、未完成のものを見たいという欲求があるからだ。

この立場から、日本のアイドルを経由して欧米のタレント・ショウを改めて見ると、「中途半端に技術レベルが高い」と感じることがある。「American Idol Season 11 #1」でコンテスタントの動画を紹介しているのだが、1位のPhillip Phillipsは最初からできあがっていたので例外として、2位のJessica Sanchezと3位のJoshua Ledetはたしかに回を重ねるにつれて良くなっていった。しかしそれがそれほど面白くなかったのだ。

この2人はシーズンの中でいろいろと新しいことを学んでいったのだろうが、極論すると、新たな要素は、アーティストをサポートするスタッフと、大きな舞台での場慣れだけのような感じがする。それぐらいに、技術面では最初から優れていた。そして、アーティストに必要な「it」というか「ソウル」というか、それは最後までなかった。と言ったら言い過ぎではあるけれども、2人ともソウルフルな歌を歌うにはまだ若すぎた。

「it」がない人が、スタッフによる飾り付けと場慣れによって、見栄えのよいパフォーマンスをするようになるまでの過程を楽しんで見られるか、ということ。これとは対照的に、日本のアイドルはほぼその「it」だけで出発するわけで潔い。道重さゆみはそれを突き詰めた形である。


● 視聴者による投票だとどうしても人気投票になって実力を反映した結果にならない、という印象があるけれども、今年の"American Idol"も、他のタレント・ショウも、基本的には歌が上手い人が生き残るという順当な結果になっているように思った。

ここ数年、下手な歌を大量に聴いたせいかもしれないが、コンテスタントの歌唱力が全体的に底上げされているように感じる。それだけに、こちらが求める水準も高くなってしまい、プロとアマはやっぱり違うな、という感想を持ってしまうことが多くなった。本来、そんな趣旨の番組ではないはずなのに。


● 上で書いたことと反対のことを言うようだが、この手の番組にプロの歌手がゲスト出演してパフォーマンスを行うとしょぼく見えることが少なくない。前に紹介したJennifer Holidayは例外中の例外である。

ただ、いまABCでやっている"Duets"は、プロの歌手4人が、自分が選んだアマチュアとデュエットを歌って勝負をするという番組なので、プロの側も実力派が揃っている。また、昨年紹介した"The Voice"の英国版"The Voice UK"はアメリカ版よりもコーチのリキが入っている。この2つについては別の機会に書くつもり。


● そういえば"American Idol"のジャッジが、Randy Jacksonはそのままで、新たにSteven TylerとJennifer Lopezが加わっていた。この3人構成は良い。2人が現役の歌手だということは大きくて発言に説得力がある。それだけでなく、2人とも非常にチャーミングな人柄であることがよくわかった。

ただ、この2人もゲスト出演者として行ったパフォーマンスは非常にしょぼかった。世間の見方はどうか知らないが、私個人はこの2人はもともと凡庸なポップ・スターだと思っているから、その先入観もあるのかもしれない。もちろんこの番組で凡庸なポップ・スターにジャッジをやらせるのは正しい判断なのである。

Eurovision Song Contest 2012

AKB48の選挙があったようだし、今年のAmerican Idolのことを書いたこともあるし、今年のEurovision Song Contestについても書こうと思う。

私はAKB48の選挙関連はまったく見ていないのだけれども、今年も大いに盛り上がったとのこと。前にAmerican Idol絡みで書いたことがあるが、視聴者参加型番組における「投票」は本質的に面白く、端から見ていても楽しいのである。AKBの選挙の盛り上がりの裏には、日本においてその欲求を満たしてくれる大きな場が不足しているという事情があるのではなかろうか、などとぼんやりと思っている。


昔はEurovisionなんて退屈の極みと思っていたが、英語圏以外の国の音楽を積極的に漁るようになってからは、情報源というか、とっかかりの一つとして重宝するようになった。

2012年のEurovisonは、前年の優勝国であるアゼルバイジャンのバクーで開かれた。42か国がエントリーし、セミファイナルに出たのは36か国。投票で20か国が選ばれ、これにビッグ5とホスト国を加えた26か国が、5月26日のファイナルで戦った。

Eurovisionのコンテストは、各国が自国以外の国をランク付けし、ランクに応じたポイントを合計していって総得点を競うという形で行われる。個々の国のテレビ局が電話(およびケースによってはSMS)による投票を受け付ける視聴者参加型の番組だが、自分の国には投票できないから、視聴者は熱狂的なファンというよりも審査員の立場で参加することになる。もちろんいろんな地理政治的要因が働くけれども、そのバイアス自体が面白いというのはある。


私はセミファイナルとファイナルを一通り見た。毒にも薬にもならないようなポップ・ミュージックが各国の代表として選ばれてくるという構造的な仕組みができあがっているわけだけれども、その中で敢えて選ぶならこれだろうな、と思ったものが優勝したのには少しほっとした。

優勝したのはスウェーデンのLoreenという人。タレント・ショウ"Idol 2004"の出身者らしいが、歌手として本格的に活動を始めたのは2011年。その人の"Euphoria"という曲である: http://www.youtube.com/watch?v=Pfo-8z86x80





どうしてもKate Bushを連想してしまい、Kate Bushの偉大さを再認識させられて終わるという感じだけれども、そのていどにも語れるものが他になかったのだ。


ただし一番面白かったのはアルバニアのRona Nishliuという人の"Suus"という曲だった: http://www.youtube.com/watch?v=QeBL2UHhyEc




1:40以降のサビの部分を見ると、この曲の評価が賛否両論になる理由がわかる。順位としては5位で、アルバニアにとってはこれまでで最上位の成績。この人もアルバニアのタレント・ショウ"Albanian Idol"の出身者らしい。

こちらに英語バージョンがある: (http://www.youtube.com/watch?v=YQh0vB2dFzk)。また、歌詞の英訳がこちら(http://wiwibloggs.com/2011/12/29/albania-rona-nishliu-will-sing-suus-at-eurovision-2012/13386/)。なるほど、あの叫んでいるところは"Let me cry"と言っているわけだな。


上の2つの映像を見てわかるように、プロダクションにはものすごくリキが入っている。これを生放送かつ生歌でやって、放送時間内に投票を受け付けて結果まで発表するというのは凄いことだ。国、というか欧州の矜持を感じる。

なおEurovisionは口パクを許さないという明示的なルールを持っている。この点には好感が持てる。

American Idol Season 11 #2

「American Idol Season 11 #1」の続き。


● 5位のSkylar Laineは18歳(番組開始時は17歳)の白人女性。カントリー・シンガーとしてすでに固まっており、そのフィールド内では非常に安定している。

1つ挙げるなら、トップ7のときのKellie Picklerの"Didn't You Know How Much I Loved You": http://www.youtube.com/watch?v=dGcUO5JSaF4。Kellie Picklerなんて聞いたことない人が多いと思うが、American Idolシーズン5の出身者のカントリー・シンガーだ。




私の好みとしては、ここまでで挙がった女性の中では一番いい。技術が安定していないディーバよりは、安定しているカントリー。オリジナルなところはないけれども、いいプロデューサーに巡り会えればこの道で食えそう。他のお勧め動画は、7位に終わったColton Dixonとのデュエット、Kenny RogersとDolly Partonの"Islands in The Stream" (http://www.youtube.com/watch?v=OEJbiOMwm6A)。キュートなパフォーマンスだ。この2人が付き合っているという噂がネット上で流れ、番組内で2人が必死に否定していた。そんな噂を流したがるティーンエージャーの女の子が主たる視聴者の番組なのだ。



● 6位のElise Testoneは、28歳の白人女性。28歳はAmerican Idol応募条件の上限で、後がない。レコード会社と契約していないというだけで、プロと言っていいぐらいのキャリアを持つミュージシャンである。

この人の良さが一番出ているのは、トップ7のときの、Alicia Keysの"No One"(http://www.youtube.com/watch?v=n2wiNmxKLME)だと思うが、ここでは敢えて、優勝者Phillip Phillipsとのデュエット、Stevie NicksとTom Pettyの"Stop Draggin' My Heart Around"を紹介する: http://www.youtube.com/watch?v=PqdW4eEFcIM




Stevie Nicksはトップ9のときにコンテスタントたちのためのメンターとして招かれており、Elise Testoneの声を称賛していた。このタイプの歌だけでなく、Led Zeppelinの"Whole Lotta Love" (http://www.youtube.com/watch?v=Usn3o3kle44なんかもやっており、フォーク・ロックからハード・ロックまでこなすロック姐ちゃんだ。


● 上位の人の紹介はここで打ち止めにするが、9位に終わったHeejun Hanという人のことには触れておきたい。この人は韓国系の男性で、12歳のときにアメリカに移住してきた「1世」。そのため歌うときの発音に難があり、番組中で本人も気にしていることがあった。早めに脱落したことからわかるように、歌の面では上位者と比べると勝負にならなかったが、この人はユーモアのセンスが素晴らしく、ハリウッド・ラウンドでのグループ作業の場面で焦点が当てられていただけでなく、ライブ放送が始まってからもいいジョークを口にしていた。舞台度胸がある、ということなのだろうか。

ここで紹介するのはオーディションのときの動画: http://www.youtube.com/watch?v=NjhbUCcBZIc



American Idolで、アジア系の男性にこのようにポジティブな形でスポットライトが当たったことはないのではないかと思う。前に書いたことがあるが、ダンス系のリアリティ・ショウではアジア人男性が大活躍だ。

今回はここまで。あと少なくとも1回は、まとめの文章を書く予定。

American Idol Season 11 #1

「American Idol」については、「リアリティ・ショウについて」のカテゴリの初めの方でいくつかの文章を書いている。私は日本のアイドルにハマったこの2年間は見ていなかったのだが、今年は以前ほど熱心にではなく、番組だけを軽く見るていどにフィナーレまでを追いかけた。そこで印象に残ったことをいくつか書いてみることにする。



● 2012年のシーズン11のフィナーレは5月23日に行われ、5年連続で白人男性が優勝した。WGWG (White Guy With Guitar)と呼んでいる。投票者の大多数が女性なので(たぶん)、これは仕方がないことなのだ。ただ今年は私も優勝者の Phillip Phillips を気に入ってしまったので、この結果に特に不満はない。

Phillip Phillipsの、トップ2の、つまり優勝者を決める回の3つのパフォーマンスのうちの1つ。Billy Joelの"Movin' Out": http://www.youtube.com/watch?v=aDlW9BFbUmM)




番組中でDave Matthewsに似ているという話が出ていたが、たしかに似ているところがあって、私が気に入ったのはそのせいもあるかもしれない。この人のパフォーマンスは最初から安定しており、YouTubeでヒットするどの動画を見ても大丈夫だと思うが、他にいくつか見てみたいと思う人には、Bob Segerの"We've Got Tonight" (http://www.youtube.com/watch?v=wBtMQ4bt3bI、Matchbox 20の"Disease" (http://www.youtube.com/watch?v=e1-Nl4cvLLA)、Damien Riceの"Volcano" (http://www.youtube.com/watch?v=0YP-IcCiCEI)あたりをお勧めする。あと、オーディションで歌ったMichael Jacksonの"Thriller" (http://www.youtube.com/watch?v=icM3EPK9sjw)も素晴らしい。



● 準優勝者はJessica Sanchezという16歳の女性。メキシコ系アメリカ人の父親とフィリピーナの母親を持つ。この人は絶唱系 R&B ディーバで、技術的には優れているが、その手の歌を歌うにはまだ若すぎるという感のあるパフォーマンスがちょこちょこあった。

しかし、フィナーレでの、Jennifer Hollidayと一緒に歌った"And I Am Telling You I'm Not Going"にはさすがに脱帽せざるをえない: (http://www.youtube.com/watch?v=NWxDVvwzRH4)




これはただしJennifer Hollidayのスタイルの真似をしているから安定感が生まれているのだし、1人でこの顔芸をやって場を持たせるだけの力はないんじゃないかと思う。とはいえ、Jennifer Hollidayと一緒にこうやって歌えるだけでも凄いことだ。ちなみにこの人は11歳のときに"America's Got Talent"に出ている(http://www.youtube.com/watch?v=F5iQEjSln8U)。そういえば、このちびっ子シンガーのことは覚えている。"America's Got Talent"は最初のシーズンだけつまみ食いした。



● 3位に終わったJoshua Ledetは黒人男性。現代風のR&Bではない古典的なソウル・シンガー。

この人がトップ4の回で歌ったJames Brownの"It's A Man's Man's Man's World"は、今シーズンの全出演者の中でのベスト・パフォーマンスだったと思う: http://www.youtube.com/watch?v=j4babjH3QF8




この人は後の方になるに従って洗練されていったように思うので、他のものを見るなら"Top n"の数字が小さいのを選ぶといい。とは言っても、テクニックは最初から完成されていた。ちなみに黒人男性が優勝したのはシーズン2の1回だけ。性別だけでなく人種のバイアスもある。



● 4位のHollie Cavanaghは、英国生まれでテキサス在住の18歳の白人女性。歳の割りには若く(アメリカ人にしては)、最年少のJessica Sanchezよりも幼く見えることが多かった。普通のポップ・シンガーで、まだ何になるのかわかっていない原石という感じ。

お勧めの動画を1つ挙げるなら、トップ6のときのMiley Cyrusの"The Climb"だろうか: http://www.youtube.com/watch?v=660w4SA3Oqc




上に書いたようにまだ原石であり、日本の「アイドル」に近いポジションにいると感じた。ここまで残ったのはそのせいではないかと思っている。アメリカ人のなかの、日本のアイドル的なものを好む層の支持を得た、と。



長くなってきたので、エントリを分ける。

America's Best Dance Crew - リアリティ・ショウについて #13

前回の「ダンス・コンペティション番組 - リアリティ・ショウについて #12」からけっこう時が経ってしまった。最初に『So You Think You Can Dance』を取り上げるつもりで、少しは番組を見直しておこうなどと思っていたら、内容に飽きて先に進めなくなっていたのだ。というわけで『America's Best Dance Crew』で見切り発車することにした。

『America's Best Dance Crew』は、ヒップ・ホップのダンス・クルーのコンペティション番組である。タイトルに"Hip Hop"が入っていないから、どんなダンス・スタイルでもいいはずなのだが、MTVで放送されている視聴者投票番組だから他のスタイルのクルーはそんなに勝ち進めない。番組の審査方法などのフォーマットについては、前のエントリの内容も参照していただきたい。

三大ダンス・コンペティション番組の他の2つ(『SYTYCD』と『DwtS』)と大きく異なるのは、毎週与えられる課題のコレオグラフィーをダンス・クルー本人たちが担当するということだ(『SYTYCD』ではプロのコレオグラファー、『DwtS』ではコンテスタントと組んだプロのダンサーが担当する)。番組で勝ち抜いている間は、1分ほどのルーチンの課題が与えられてからコレオグラフィーを作ってそれを練習するというサイクルで、自由時間がほとんどなくなるほど厳しいらしく、体力面だけでなく心理面でのプレッシャーが大きい。ダンス・クルー単位でのコンペティションだから、各人のスキルだけでなくチームとしての結束力が重要である。

2008年から始まってシーズン6まで続き、すでにシーズン7をやることが決まっているこの番組ではあるが、実はかなり勢いが落ちてきている。とりあえずはシーズン1の優勝チーム"Jabbawockeez"(「ジャバウォキーズ」)の第1週から優勝が決まった第8週までのパフォーマンスの動画を紹介する。前の週に終わったポーズから始めるという趣向を取り入れたのはこのクルーだけだった。毎回異なる課題が与えられるので、いろんなタイプのダンスが入っている。カットの選び方・割り方がひどいが、シーズン2以降は若干改善された。


Weeks 1-7 (http://www.youtube.com/watch?v=jQG9XFKfp14




Weeks 7-8 (http://www.youtube.com/watch?v=fG2kXXugNxs




これはやっぱり素晴らしいと思う。そう思いませんか? しかし残念なことに、いままで6シーズンやってきて、これを超えるクルーが出てこない。


この番組はWorld Hip Hop Championshipというイベントのアメリカでのコーディネーターたちが作っている。で、シーズン1を作るときにすでにこのサークル内で有名だった"Jabbawockeez"に声を掛けたわけだが、これが事実上のベストのクルーだったという単純な話だ。

もちろんアメリカ各地のローカルなコミュニティに働きかけて、広くオーディションを行っているけれども、この番組のフォーマットそのものが特定のタイプのクルーに有利になるように作られている。このコンテストに参加するクルーは、毎週与えられる多様な課題を1分ていどの長さのルーチンにまとめて、放映に耐えられるようなレベルに仕上げるだけでなく、視聴者を飽きさせない目新しさを毎週提示できなくてはならない。何か一芸に特化したクルーが出てきても、多様な要求に応えられる柔軟性がなければ勝ち進めないわけだ。この条件を満たせるダンス・クルーのジャンルや傾向はあるていど決まっており、それにぴたりとはまるクルーの中で、"Jabbawockeez"はきわめて高性能だった、ということ。

具体的には、アイソレーション重視のフォーメーション指向のダンスができて、優れたコレオグラファーを作ることができ、Bboyのムーヴが得意なメンバーがいる、というような条件である。

過去にはスケーター、ロープ・ジャンピング、クロッギング、コントーショニストなどの変則的なジャンルのクルーが出演したが、その人たちはそのジャンル内では達人であっても、番組のフォーマットに合わせたルーチンを作り続けることができずに飽きられてしまう。

もっと可哀想なのは、曲がりなりにもヒップ・ホップやその周辺のストリート/ソーシャル・ダンス・シーンの人たち。たとえばクランピングの創始者Tight Eyezが率いるクルーが出たことがある(シーズン6の"Street Kingdom": http://www.youtube.com/watch?v=h28HBu7_CrM)。あるいはヴォーギングのクルー(シーズン4の"Vogue Evolution": http://www.youtube.com/watch?v=YXS0cVxyMuI)。こういう人たちは番組での露出そのものから大きな恩恵を受けるだろうけれども、番組に出演している間は、何か場違いなことをやっているという雰囲気がついて回る。


ヒップ・ホップのジャンル内でも、視聴者がらの支持を得やすいタイプというのはある。「西海岸のアジア系」である。西海岸で作られている番組だから、西海岸ベースのクルーが強いというのは当然なのだけれども、アジア人が強いというのは、上述の「アイソレーション重視のフォーメーション指向のダンス」と密接に関係していると思われる。アジア人はこういうのが得意なようなのだ。上で紹介した"Jabbawockeez"は、黒人が1人入っているものの圧倒的にアジア系が多い。シーズン3で優勝した"Quest Crew"は、この系統ではなくてBboyのクルーだが、日系人を含むアジア系が圧倒的多数であるだけでなく、日本生まれの「日本人」(Hokuto "Hok" Konishi)がいる。シーズン4で優勝した"We Are Heroes"は、英語の発音がおぼつかない日本人女性によって率いられていたポッピングのクルー。シーズン5の"Poreotix"はベトナム系とフィリピン系のアメリカ人から構成されるポッピングのクルー。

こんな具合だから、この番組はアジア系でないと圧倒的に不利であると言われる。なぜそうなのかというと、視聴者の好みがそうだからなわけだけれども、じゃあなぜ視聴者はこういうものを好むのだろうか。

いったい誰がMTVを見ているのか、という話で、実は白人中産階級のティーン・エージャーが大部分なのだ、ということはよく言われるし、いやそうでもないという話も聞くのだけれども、この『ABDC』に関して細かいプロファイリングが行われたという話は聞かない。ただ視聴率調査の結果から、12歳~34歳の層に強いことはわかっている。つまり、たぶん「アジアっぽいものはcoolだ」というような心情を持っている若者層が投票して、上に記したようなクルーを勝ち進ませているのだと思われる。


しかし、それ以上に重要だと思われるファクターがある。それは、見ているのが「中産階級」の「視聴者」である、ということだ。それはヒップ・ホップ・ダンスが鑑賞対象として商業化された、ということである。ダンスを供給する側から見ると、ダンサーは「スタジオ・ダンサー」になってきている。「ストリート・ダンス」などと呼んでいるけれども、実際にストリートで踊っている人はこんな場にはなかなか出てこられないし、出てきても、洗練されていないという理由で勝ち抜けない。

いくつかのジャンルの音楽を堕落させたMTVが、こうやって商業化されたヒップ・ホップ・ダンスのコンペティション番組を放映しているというのは暗示的である。


もちろん、この番組を見るこの私自身も中産階級に属していて、現実に上に書いたような好みを持ちがちなのだから、別に何も問題はない。だいたい日本の女性アイドル・グループのダンスを見て楽しんでいる人間が、何をいまさら「ストリート」だ、という話になる。ただ、ここにはもうちょっと探究に値する問題が潜んでいるように思う。

この項、続く予定。

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上に書いたシーズン3の優勝クルー"Quest Crew"の動画。

http://www.youtube.com/watch?v=8xFcsFChDAI



Bboyのクルーの割りにはシアトリカルな演出への意識がある。一番背の低い、奇妙な髪型をしていることが多い人が日本人のHokで、先に『SYTYCD』に出演していたこともあって大人気だ。


シーズン3の準優勝クルー"Beat Freaks"はBgirlのグループ。

http://www.youtube.com/watch?v=IYtBokzc0Dg



Gwen Stefaniの"Harajuku Girls"の一員で、2010年にPussycat Dollsに入った仲宗根梨乃がいる。この人だけでなく、メンバー全員がすでにダンサーとしてのキャリアを持っている人たちだった。


これらの動画を見るとわかると思うが、1人か2人、群を抜いて優れたダンサーがいたからどうなる、というようなコンペティションではない。個人のダンスの能力を競う『DwtS』や『SYTYCD』とは大きく異なり、ダンス・クルーのコレオグラフィーとパフォーマンスを競い合うことになる。

普通のコンペティションと比べると、ルーチンの組み立て方や時間の制限が厳しいこと、同業者ではなく一般視聴者を相手にしていること、したがって難度の高いムーヴの価値がそれほど高くなく、それをどう見せるかの方が重要になってくる、などの違いがあると思われる。

『ABDC』では視聴者の投票数が少なかった下位グループの中から、その週に追放されるクルーをジャッジが選ぶ(実際にはプロデューサーがすべて決めているらしいが)というエリミネーション方式を採用しているけれども、決勝戦は完全に視聴者投票によって決まるし、ジャッジも視聴者の好みを毎週毎週完全に無視することはしにくい。だから究極的には視聴者の投票行動によってだいたいの順位が決まるといって差し支えないと思う。

ダンス・コンペティション番組 - リアリティ・ショウについて #12

前回の「リアリティ・ショウについて #11」では、次はSurvivorの話をすると書いたのだが、ここで一度、ダンス・コンペティション番組を紹介しておこうと思う。これまで扱ってきた「投票」というトピックに関連するだけでなく、考えてみればダンスというテーマそのものがモーニング娘。や日本のアイドルと密接な関係を持っているからだ。


現在のアメリカの3大ダンス・コンペティション番組といえば、『Dancing with the Stars』(Wikipediaのエントリ、以下「DwtS」)、『So You Think You Can Dance』(Wikipediaのエントリ、以下「SYTYCD」)、『America's Best Dance Crew』(Wikipediaのエントリ、以下「ABDC」)の3つということになる。

DwtSはBBCの『Strictly Come Dancing』という番組のフォーマットをもとにした番組で、2005年からABCで放送され、2011年春のシーズン12が最新のシーズン。セレブリティとプロのダンサーが男女でペアを組んで行うボールルーム・ダンスのコンペティションである。世界の多くの国で作られて大成功を収めているが、日本では2006年に『シャル・ウィ・ダンス?~オールスター社交ダンス選手権~』(Wikipediaのエントリ)というタイトルで作られて、うまく行かなかったようだ。

SWTYCDは『American Idol』のプロデューサーが関わっている番組で、2005年からFOXで放送され、2011年のシーズン8が現在放送中。ソロ・ダンサーがボールルームからコンテンポラリーやヒップホップまでさまざまなジャンルのダンスを踊って競い合う。アメリカ以外の数国でも作られている。

ABDCは、2008年からMTVで放送されており、2011年春のシーズン6が最新シーズン。ヒップホップのダンス・クルー間でのコンペティションである。『American Idol』のジャッジを務めたRandy Jacksonがエグゼクティブ・プロデューサーを務めているが、これは単なる名義貸しというのがもっぱらの噂で、World Hip Hop Championshipのアメリカでのコーディネーターたちが作っているということらしい。

番組の「格」ということでいうとABCのお化け視聴率番組であるDwtSが圧倒的。SWTYCDはFOXの夏休みのニッチ番組で、ABDCはたかがMTVの番組である。この3つはダンスのジャンルが異なるので、うまく棲み分けができていると言えるのだが、出演者に重なりがある。SWTYCDの上位成績者がDwtSのプロ・ダンサーとして出演したり、クルーの一員としてABDCに出たりする。また2011年には、ABDCの優勝チームのリーダーがSWTYCDのオーディションを受けるという「逆転現象」が起こった。なお我々にとっては興味深いことに、この人は日本生まれの「日本人」である(アメリカで結婚しているので、実際の国籍がどちらなのかは知らないが)。American Idolなどの歌のコンペティション番組でアジア系がほとんど活躍できないのに対し、ダンス番組、特にヒップホップを扱うABDCではアジア人が非常に強く、生粋の「日本人」も何人か出演しているというのが面白い。


この3つの視聴者投票型番組は、前に紹介した『American Idol』とは異なり、コンテスタントのエリミネーションに視聴者の投票だけでなく「ジャッジ」の評価も反映されるという大きな特徴がある。なぜそうなっているのかというと、製作者の側が視聴者の評価を信用していない、ということに尽きるだろう。歌の場合は、基礎的なトレーニングを受けていない人であってもそれなりに歌えるのに対し、ダンスの場合は、毎週の課題をこなすためだけにもそれなりのスキルが必要になってくる。しかし視聴者は投票にあたって必ずしもスキルを最重視しないので、特にシーズンの初めのうちには、高いスキルを持っている人が「事故」で落ちてしまいかねない。そんな事態を避けるべく、SWTYCDとABDCは、視聴者投票で下位だった数グループから、ジャッジがその週に落ちるグループを1つ選ぶ、という方式をとっている。なおDwtSは、ジャッジ3人の評価と視聴者による投票の評価が50:50の重み付けで加算されるという方式なので、あまり露骨な操作ができないけれども、次に述べるようにDwtSは本質的にセレブリティの出演する人気投票番組なのでそれほど大きな問題にはならない。


前に『逃走中』について書いたエントリで、素人が競い合うものでないとゲーム・ショウは面白くならない、と書いた。芸能人が出演する形式だと、そのゲームに勝つことよりも、その番組に出ることによるパブリシティを重視してしまいかねない。とはいえ、英米にもセレブリティが出演するエリミネーション方式のリアリティ・ショウはたくさんある。DwtSはその中でも最もよく出来ていて、最も人気がある番組といっていいだろう。

勝ち続ければ2か月以上にわたって練習し、生放送で踊らなくてはならないため、ほんとうに忙しいセレブリティは出演できない。逆にいえば、早めに負けて脱落すればそれほどの負担にはならないわけで、優勝賞金よりも出演料の方がはるかに大きい契約形態であるため、最初から明らかに勝つ気がないまま出てくる人もいる。ただあまりの醜態をさらすと、パブリシティの面では逆効果になりかねない。その意味で、自らの身を人の目にさらすことでステータスを上げる、セレブリティとしての力量そのものが試される場であるとは言える。

セレブリティが出演する視聴者投票形式の番組の最大の問題点は、個々のコンテスタントが持っている既存のファン・ベースの大きさによって勝敗がほぼ決まってしまうことだ。たとえば2011年春のシーズン12では、ピッツバーグ・スティーラーズの現役フットボール選手であるHines Wardが優勝したのだが、ダンスの腕前ということでいえば3位に終わったディズニー・チャンネルのアイドルChelsea Kaneの方がはるかに上だった。彼女はミュージカル・シアターの経験もあったので、もともと公平な戦いではなかったのだが。いずれにせよ、あまりにも下手なので、ファンでさえもがそろそろ敗退した方が本人のためにもいいだろうと思って投票しなくなる、というようなケースを除けば、DwtSは本質的にセレブリティの人気投票の番組である。


そういうわけで、良いダンスを鑑賞したいと思っている人にとって、DwtSはぴったりの番組ではない。DwtSが扱っているボールルーム・ダンスのほんとうに優れたパフォーマンスを見たいのなら、それこそ世界的なコンペティションの中継番組を見ればよい。DwtSでは、ダンスの経験のないスポーツ選手や俳優のぎごちない踊りを見させられることになる。


それでも私はこの3つのダンス・コンペティション番組の中ではDwtSが一番好きである、というか、見応えのあるパフォーマンスを一番多く見られる番組である、と思っている。それは主に、主役であるセレブリティのサポート役として出演するプロのダンサーたちのおかげであるが、他にもいくつか要因があって、いろいろと考えさせられることが多い。以下、いくつか見るに値する動画を紹介し、細かい説明は後の回にまわすことにする。

Julianne HoughとDerek Houghの兄妹によるJive。どちらもプロのダンサーで、これはリザルト・ショーでのエキシビション。Julianne Houghの方はカントリー・シンガーとしてアルバムも出している。
http://www.youtube.com/watch?v=5JVLrmxAbpI



2011年春シーズンの優勝者Hines Wardと、オーストラリア出身のプロ・ダンサーKym Johnson。ダンスは3:50から。
http://www.youtube.com/watch?v=H8B_676rNAw&t=3m50s




2011年春シーズンで途中で敗退した俳優・ミュージシャンのRomeoと、SYTYCD出身のプロ・ダンサーChelsie Hightower。ダンスは2:00から。
http://www.youtube.com/watch?v=p3e_Ek_-Vcs&t=2m00s




やはり2011年春シーズンで途中で敗退した俳優Ralph Macchioと、ウクライナ出身のKarina Smirnoff。ダンスは2:00から。ちなみにこのRalph Macchioは『ベスト・キッド』("The Karate Kid")でミスター・ミヤギからカラテを教わる少年を演じていたあのラルフ・マッチオだ。
http://www.youtube.com/watch?v=4QBVRH_l4yU&t=2m00s




このブログにアイドル関連の文章を読みに来ている人にとって、この手のボールルーム・ダンスやパートナー・ダンスはあまり馴染みがないものかもしれないが、私にとってはこちらの方(さらにいうと後に紹介する予定のモダンやコンテンポラリーやヒップホップのダンス)が、日本独特の「アイドル・ダンス」と呼ぶべきものよりも先にあった。

これらのジャンルの中ではあったが、この種のリアリティ・ショウに触れていたために、技術的に不十分な踊りに対する耐性があるていどできあがっていたのだろう。しかしそれとは逆に、それほど上手でない人たちのダンスを大量に見てうんざりしたせいで、ある種のダメさに対する寛容さが失われた、とも思う。たとえば私はEXILEやその「妹分」であるHappinessのダンスが耐えられない。ダンス・パフォーマンスという点で、スマイレージはHappinessよりもずっとましだと本気で思っている。いやほんと、たとえばABDCの特に最近のシーズンを見れば、ソウルの入っていないヒップホップ・ダンスほど下らないものはない、と誰もが痛感するはずなのだ。

Survivor #1 - リアリティ・ショウについて #11

前回の「リアリティ・ショウについて #10」では英国の"Big Brother"のことを書いたのだが、今回からは"Survivor"の話を書く。このフォーマットの番組は日本版『サバイバー』を含めて世界の多くの国で製作されているが、私はアメリカ版しか見たことがないので、以下はすべてアメリカ版の"Survivor"の話である。

このWikipediaのセクションにある視聴者数の表からわかるように、Survivorはシーズン1のフィナーレは5000万人、シーズン2のプレミアは4500万人が見たお化け番組だった。その後は、最初の大成功によって確立されたブランドを磨り減らしているという状況だ。しかし、この番組の社会ゲームとしての面白さは少なくとも最初の5、6年は高いレベルに保たれていた。

私見では、この時期のSurvivorは史上最高の頭脳派ゲーム・ショウだった。ただ、この番組のゲーム・ショウ的側面は、このブログのテーマであるモーニング娘。とかアイドルとはあまり関係がない。その点をご諒承いただきたい。


Wikipediaのエントリにある最初の文、「孤島や密林、荒野などの僻地に隔離された参加者たちが、サバイバル生活をしながら賞金や賞品をめぐって争う視聴者参加型番組。ほかの参加者に対して投票し追放することにより人数を削っていき、最終的に残った一人が「最強のサバイバー」の称号を得る」は、簡にして要を得ている。

この番組のサバイバル生活の要素は、シーズンを重ねるに連れて薄くなっていった。初期のSurvivorでは、コンテスタントたちが何日間も火を使えなかったり、栄養不良のためにガリガリに痩せて髪の毛が抜け落ちるところまで行くなど、なかなかハードだったのだが、こういうのは必ずしもテレビ番組としての見栄えの良さに結びつかない。

実際のところ、これから述べていくように、この番組のゲーム・ショウとしての本質的な部分はサバイバル生活にあるわけではなく、「集団内での投票によって追放者を決める」というエリミネーション方式にあるから、生活を必要以上に困難にする必要はもともとないとはいえる。アメリカのBig Brotherは英国(や他の国々)のBig Brotherとは異なり、このSurvivorと同じタイプのエリミネーション方式を採用して番組として成立させているから、普通の家を舞台にしてもかまわないのである。しかし、このゲームが普通の家の中でも(さらにはたとえばオンライン・ゲームとしても)プレイできるものだからこそ、厳しい生活環境こそがSurvivorのユニークな特徴であり、このゲームにユニークな価値を与えていると言うこともできるだろう。


ここでアメリカのBig Brotherについて簡単に説明しておく。これまでのエントリで説明してきたように、英国を初めとする他の国のBig Brotherは、視聴者の投票によって勝者が決まる。アメリカのBig Brotherも第1シーズンはこの方式を採用した。しかしその結果があまり芳しいものではない、というプロデューサーの判断があって、第2シーズンからはすでにSurvivorでの実績があった、コンテスタント間での相互の投票によるエリミネーションが採用された。投票の手順に違いはあるけれども、アメリカのBig BrotherはSurvivorの「家」バージョンである、と言える。

アメリカのBig BrotherとSurvivorの最大の違いは、その製作方式にある。Big Brotherはすでに説明してきたように、数か月にわたって参加者を閉じ込め、その生活を多数のカメラで捉え、インターネット・フィードを含めて視聴者がリアルタイムで鑑賞できるようにしている。家からの追放や、勝者が決まるフィナーレはライブ放送される。一方Survivorは1シーズン13週間にわたって放映されるが、収録期間はそれよりも短く(1回のエピソードで現実の3日間ほどをカバーする)、すべてを撮り終わり、編集した上で放映される。つまり、放送開始の時点で勝者はすでに決まっているのである。

Survivorのエディターは大量の映像素材から、フィナーレへと向かう45分単位のエピソードを1つずつ作っていくことになる。この特性から、Survivorの(またこのように作られる他のゲーム・ショウの)ファンの間では、番組の内容から、誰がどんな順番で脱落していくのかを予想するという楽しみ方が生まれた。これは要するに、エディターが1つのエピソードにどんな内容を盛り込んだか、ということから、フィナーレに至るまでの期間にどんな物語を語ろうとしているのかを読み取るメタ・ゲームである。これはメディア・リテラシーの訓練になる面白いお遊びで、私も学ぶところが多かった(もちろんシナリオ・ライティングの教材にもなりそうだ)。

もう1つの帰結として、勝者や勝負のプロセスに関する情報漏洩が起きて、ネット上でスポイラーが流れることがある。関係者に厳しい箝口令が敷かれるとしても、細かい事実が集まると重大な情報がわかることもある。コンテスタントを一箇所に閉じ込めて行うSurvivorはその点まだマシだが、世界中を飛び回るThe Amazing Raceの場合だと、どこどこの国のどこどこの街で、こんな恰好をしたチームがカメラ・クルーを従えてうろつき回っていた、みたいな目撃証言が集まってくるのは避けられない。そうすると、そのチームは少なくともその場所に行くまでは生き残っていた、ということがわかるわけだ。


では、Survivorのエリミネーション方式の基本形を説明する。Survivorではシーズンが進むにつれてルールの細かい変更が数多く試みられた。以下に説明するのはその基本的な形だ。

20人ほどの老若男女が無人島などの人里離れた環境に連れて行かれ、2つの部族("tribe")に分けられる。この部族は1つのチームとして厳しい環境で一緒に生活することになる。持ち込める文明の利器は基本的に身に着けた衣服のみ、食糧や住む場所さえも自分たちで手配しなくてはならないため、生き抜くためだけにも緊密なチームワークが必要となる。

2つの部族は定期的に"Challenge"と呼ばれる、知力、体力、精神力など、参加者のさまざまな側面を競い合うように考案されたゲームで対戦する。「報酬チャレンジ」(Reward Challenges)は、勝った部族に生活に便利な物資(火打ち石とか釣り針とか)が与えられるチャレンジ。そしてもう一つのタイプの「免除チャレンジ」(Immunity Challenges)は、負けた方が、追放者を決める「部族協議会」(Tribal Council)と呼ばれるエリミネーションの儀式に送られるチャレンジである。

「部族協議会」(Tribal Council)では、直前の免除チャレンジに負けた方の部族が、その部族から追放したいメンバーを1人ずつ選んで無記名で投票する。開票はその場で行われ、一番票を多く集めたメンバーがその場で追放される。要するに、部族の仲間から一番嫌われているメンバーがその場で明らかになり、追放されるというわけだ。

この「部族協議会」が終わって1人減ってから、次の「部族協議会」が行われるまでの1サイクルは、現実の世界では3日間だが、テレビで放送されるときには1つのエピソードとなる。

これを何度か繰り返し、人数が減って、だいたい10人ほどになったときに2つの部族が統合される。その後のチャレンジは個人戦である。「報酬チャレンジ」は勝者1人に報償が与えられ、「免除チャレンジ」は勝者1人が追放から免除される。

つまり、部族の統合前は、「部族協議会」で追放者を選ばなくてはならないのは免除チャレンジに負けた部族だけだったが、統合後は全員が投票に参加し、免除チャレンジに勝った者除く全員が追放の対象になるわけだ。

こうやってさらに人数を減らし、最後の2人または3人になったところで最終決戦が行われる。このときに投票を行う「陪審団」(The jury)は、それまでに追放された者の上位10名ほどから構成される。最後に残ったファイナリストたちは、陪審団に向かって自分がいかに勝者にふさわしいかをアピールし、陪審員たちはそれを聞いた上で投票を行う。フィナーレでは、スタジオで行われるライブ放送で開票が行われ、勝者が発表される(シーズン2以降)。


まとめよう。2つの部族に分けられたコンテスタントたちは、共同生活をし、部族間での競争を行うことによって仲間意識を育む。免除チャレンジに負けると仲間が1人減るわけだから、生活が余計大変になっていくし、その後のチャレンジにも勝ちにくくなることが多いから、どのチャレンジにも真剣に取り組まなくてはならない。

やがて部族が1つに統合される。部族間の対立関係はなくなり、すべてが個人間の競争になる。免除チャレンジに勝てなかった者は、3日に一度の部族協議会で、自分がターゲットにならないよう社会的ゲームをプレイする必要がある。

うまく生き延びてファイナルまで残ったら、今度は陪審団を相手にスピーチをして、自分を売り込まなくてはならない。ここまで残っているということは、他人を陥れるための陰謀や裏切りに荷担してきたということだが、そのターゲットとなって追放された人たちに、自分が100万ドルの賞金を受け取る価値があると説得しなくてはならないのだ(ちなみに2位以降にも、順位に応じた賞金があるが、その額は格段と少ない)。

さて、このようなルールのゲームで勝つためには、どんな戦略のもとに、どのように振る舞えばいいだろうか。100万ドルはかなりの額であり、勝つために死にものぐるいで頑張る価値がある。

答えは次回に。


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次に紹介するのは、シーズン1から10までのSurvivorのオープニング・ムービー。コンテスタントたちがかっこよく紹介される。




初期のSurvivorでは、コンテスタントたちは基本的に「普通の人々」だった。しかし番組が大成功を収め、出演者の中からリアリティ・スターに、さらには本格的なセレブリティになる人たちも出始めると、そういうポジションを狙う「芸能人志望」の人々が増えていき、製作側も見た目を優先してその手の人々(model-actorを略してmactorと呼ばれる)を起用するようになっていった。

初期のSurvivorで、後に最も成功を収めたのは、シーズン2のElisabethだろう(上記ムービーで1:30あたり)。この人はこの後すぐにフットボール選手Tim Hasselbeckと結婚し、Elisabeth Hasselbeckという名前になって、トーク番組『The View』のホストの1人として芸能活動をするようになった。見てわかるように可愛い女の子で、Survivor放映時にはその健気な戦いぶりで人気を集めたが、The Viewではガチガチのタカ派の論客となったため、みんながっかりした、という経緯。

YouTubeでElisabeth Hasselbeckで検索すると、出てくる動画のタイトルだけからも、その不人気ぶりが(あるいは見方によってはその人気が)わかる。私が特に気に入っているのは、Jesse Venturaと、ムスリムに対する水責めの拷問の是非について議論したときのクリップ(http://www.youtube.com/watch?v=FSra-McRZEc)。

Big Brother #3 - リアリティ・ショウについて #10

前回の「リアリティ・ショウについて #9」では英国のBig Brotherの投票とエリミネーションの方式について説明した。American Idolとは異なり、英国のBig Brotherは投票が有料であることと、ブックメーキングの対象になっている点で、その投票行動がより「市場化」されているといえる。実際、英国ではX FactorやEurovisionなどのコンテスト番組も賭けの対象となっていて(たとえばhttp://www.oddschecker.com/specials/tv/を参照)、投票者はより多くの情報を持って投票を行っている。では、視聴者/投票者はどんな情報を手に入れられるのか。以下では私が一番ハマっていた2006~07年頃の状況を紹介する。


まず、ライブ・フィードがインターネット経由と衛星/ケーブル・チャンネルで提供される(ただし検閲のために10分ほど遅れている。検閲が必要なのは、主に出演者のプライバシーに関わる会話を消さなくてはならないから)。

毎日、1時間枠の「ハイライト・ショウ」がある。ここでは「リアリティ・ショウについて #7」で紹介したような禁欲的なドキュメンタリー・タッチの映像で、前日に起こった出来事のハイライトが映し出される。第三者によるコメンタリーなどは一切なく、ハウスメイトたちの会話と行動が淡々と映される。

これに加えて、週に数回の頻度で、Big Brotherハウスの中で起こっていることを紹介する、日本のバラエティ番組のような作りの番組が放送される。

そして週末の「追放」(eviction)の日には、番組の顔であるDavina McCallがライブで投票結果を発表し、追放された人のインタビューを行う。

「リアリティ・ショウについて #7」で紹介したように、Big Brotherハウス内での出来事は、番組の枠を超えてタブロイド紙の記事の題材にもなる。実際、シーズンが始まると、ハウスメイトたちのバックグラウンドが仔細に報道され、過去の秘密とかが掘り起こされてプライバシーが丸裸にされる。

インターネット上でのファンの活動も活発である。Big Brotherハウスの中で何か重大な事件が起こるとすぐにフォーラムに報告され、活発な議論が行われる。興味深い会話が交わされたときには、誰かがテキストに起こして投稿するし、ときにはその部分のクリップをYouTubeにアップロードしてくれる。


このように、カジュアルな視聴者は週末のライブ放送をお祭り感覚で見るだけで楽しめるが、細かいことを知りたいと思ったら大量の情報が供給されている。


一方、Big Brotherハウスの中にいるハウスメイトたちは外部からは完全に遮断されており、自分たちが外からどのように見られているかを知らないまま生活を続ける。

前回の「リアリティ・ショウについて #9」の最後に紹介した、Big Brother 7(2006年)における3週目のeviction(http://www.youtube.com/watch?v=M2M_mSWdofE)で、結果が発表されてから数十分後の様子がこちらにある。

http://www.youtube.com/watch?v=n49dl-lBSb8

スピーカーがオンになって番組ホストが"I'm coming to get you!"といってから、30秒間で別れを告げて外に出なくてはならない。1:30あたりで玄関の自動ドアが開くが、このときハウスメイトたちはドアに耳をつけて、外にいる観衆たちが被追放者をどのように迎えるかを必死に聞き取ろうとする。1:48に誰かが"I could hear the boos from here."と言い、それを受けてその週ノミネートされていたRichardが"That was loud. Bonnie didn't get that."と言った。Bonnieとはその前の週に追放された女性。このときハウスメイトたちは、追放されたSezerが視聴者に積極的に嫌われているということを初めて認識した。

しかし、ハウスメイトたちにとって自らの行動を修正するのはなかなか難しい。

この動画の1:57あたり、外からの音をさらに聞こえないようにするためにBig Brotherハウス内に録音済みの騒音が流される中、追放されたSezerと親しくなっていたGrace(緑色の服を着た女性)が、ベッドルームに取り巻き3人を集めて、敵視していたAisleyne(「アシュリーン」と発音する)の悪口大会を始めた。Aisleyneは1:38で、ブーイングを聴いて鼻を押さえながらドアから離れるブロンドの女性。GraceはAisleyneがこのときにバカにして笑ったと思って腹を立てている。"She's a fucking stupid bitch. She's laughing. She's a fucking twat."とまあ、なかなか厳しい言葉遣いである。

2:20あたりからはSezerが追放されたことのショックについて語り合っている。彼が女性のハウスメイトたちに馴れ馴れしい態度をとっていたのが、女性の視聴者層の気にくわなかったのだろうと推測し、私たちは別に苦に感じず、面白い人だと思っていたのに、視聴者たちはそのことがわからなかったんだ、などと語り合っている。

このグループはインターネット・フォーラムの世界では、映画『ミーン・ガールズ』"Mean Girls"(http://www.imdb.com/title/tt0377092/)で主人公Lindsay Lohanをいじめるグループの名をとって"The Plastics"と呼ばれた。私はこの映画でThe Plasticsのリーダーを演じたRachel McAdamsが大好きだったが(この2年前の"The Hot Chick" (http://www.imdb.com/title/tt0302640/)の彼女は素晴らしかった)、Big Brother 7のThe PlasticsのリーダーGraceは見てのとおり1つの文に5回ぐらいは'fucking'を入れなくては気が済まない女で、それはそれは視聴者から嫌われた。それに反比例するように、このいじめ集団から攻撃を受け続けたAisleyneの人気は高まり、最後の週まで続く物語の流れの1つとなったのだった。


どうだろうか。面白そうに思えるだろうか?

いまの日本のアイドルの、歌や踊りといった「タレント」以外の商品価値の大部分は、人間関係とかグループ・ダイナミクスの物語によって占められているように私は思う(ソロのアイドルが成功しにくい理由の1つはこれだろう)。

最初期のモーニング娘。で福田明日香が仲間外れにされていたとか、矢口真里が辻・加護におばちゃん扱いされてなめられていたとか、田中れいなが他メンバーとプライベートでほとんど付き合わないとか、そういった話が好きな人にとっては、このBig Brotherはそういうの「だけ」を突き詰めた究極のエンタテインメントになりえるはずだ。逆にこちらの側から入った私は、日本のアイドルというジャンルを見て、あ、これはリアリティ・ショウじゃないかと思ったわけである。

それにしても、まったくの素人を集めて、3か月という短い期間で、鑑賞にたえる物語を作れるだけのコンテンツを提供できるのだろうか、と疑問に思うかもしれない。まさにこれが、この種のリアリティ・ショウの成否を分けるポイントなので、さまざまな工夫が凝らされることになる。

最も重要なのは、最初の人選。20人ほどの人間を1つの家に閉じ込めたときにどんな人間関係が生じるのかを前もって予見するのは不可能だろうけれども、素人心理学者でもわかるようなパターンはいくつかある。複数の切り口でのサブグループが作られるように、複数の対立軸を作っておく。強力なリーダーの資質を持った人を何人か入れておく。基本的に外向型の人間を選ぶが、自己評価が低くて情緒不安定な人間もたくさん入れる。同じ部屋にしばらく同席させるだけで衝突が起こりそうな組み合わせっていうのはあるけれども、そういうのを何組か入れておく。

そうやって選んだ人たちを同じ家に入れただけで、たいてい最初の週ぐらいで耐えられなくなってドロップアウトする人が出てくる。が、しばらくすると、家が大きくて「居場所」がいくつもあることもあって、いくつかの安定した小集団ができあがり、ハウスメイトたちの心理状態も安定してくる。

Big Brotherはこうなってからの心理を揺さぶる仕掛けをふんだんに用意している。実際のところ、次から次へと繰り出される心理的攻撃にハウスメイトたちがどう反応するかを見るのが、この番組の一番の見所だといえる。

しかし、参加者の心理的マニピュレーションは英国のBig Brother固有の特徴ではなく、Survivorなどの他の社会ゲームでも使われる手段である。というわけで、英国のBig Brotherの話はいったんここで終わり、次のエントリではSurvivor(とアメリカのBig Brother)の話を書くことにする。
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